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「早メシ、早グソ……」などというのが特技のうちに数えられるのは、わが国ぐらいのものだろう。
DKにしろLK(リビング・キッチン)にしろ、和製英語であり、食事を台所でするというのはあまり上品な習慣でなかったことはいうまでもない。
住宅公団がDKをあみだした当初は、公団が食卓まで備えつけ、その使用法を入居者に説明したほどである。
いわば戦後の貧しさの産物であるDK、LKだが、いまだに一戸数千万円というマンションの不動産広告にもこの言葉が見られる。
どうも横文字やカタカナにするとシャレた感じがして、いかにも文化的だという錯覚があるのだろう。
たしかに台所と食事室が1カ所にまとめられていると、料理を運ぶ手間は少なくてすむ。
その意味で、DKやLKは、近年の日本人の住まい、ひいてはライフスタイルを育てたともいえよう。
私の感じでは、このライフスタイルの変化は、日本人の食生活の変化と軌を一にしていたように思う。
端的にいって、ご飯に味噌汁という朝食がだんだん少なくなってきたのは、まさしくDKやLK以降のことであろう。
しかし、DKやLKでの食事は、何となく落ち着けないし、食べた気がしない、という人もあろう。
また来客の目にもふれやすいので、ちらかりやすい台所をいつもきれいにしておく主婦の苦労もたいへんである。
このため最近ではすこしスペースに余裕があると、台所を独立させ、ダイニングとリビングをワンルームにしてしまうことが多い。
このLDの場合、DKとまではいかなくとも、台所で簡単に食事のできるコーナーがあると便利である。
あわただしい朝食とか、ひとりでとる主婦の昼食などというときに使えるくらいのちょっとした広さがあれば十分である。
夜中にごそごそ動き出し、冷蔵庫をあさって夜食をとる、夜行性の子どもたちや亭主にも重宝だ。
偉大な思想家・マルクスは食い物のウラミについて思想をうちたて、これまた偉大な思想家・フロイトは色恋のウラミについて思想をうちたてた。
どちらがより偉かったか私に判断させてもらえば、食い物のほうが最後に残る。
戦争中軍隊にいたとき、腹が減ってくると色恋の話などまったく出なかった。
食い物の話ばっかりである。
私は幸い苛酷なひもじい思いをしたわけではないのだが、それでも腹が減ってくると、「どこそこのあれはうまかった」なんてことばかり戦友と語り合うようになった。
「衣食足りて礼節を知る」などというが、そうなると、本質的にマルクスのほうが偉いのではないかと思えてくる。
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